ABOUT

阿部 勤

Tsutomu Abe
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略歴

1960
早稲田大学第一理工学部建築科卒業坂倉準三建築研究所入所
1960〜66
北野邸、佐賀県体育館、呉市民会館、ホテル三愛、神奈川県庁舎の設計監理に従事
1966〜70
タイ国文部省の要請により、農業高等学校、工業高等学校、及びカレッジ25校の設計監理に従事
1971
株式会社坂倉準三建築研究所退社株式会社アーキヴィジョン建築研究所設立
(戸尾任宏・室伏次郎と共同主宰)
1975
株式会社アーキヴィジョン建築研究所退社株式会社アルテック建築研究所設立
(室伏次郎と共同主宰)
1981〜84
早稲田大学理工学部建築科非常勤講師
1984
株式会社アルテック設立
1985
蓼科レーネサイド・スタンレーでJIA新人賞受賞
1989
東京藝術大学芸術学部非常勤講師
1995
女子美術大学非常勤講師
1987〜2012
日本大学芸術学部非常勤講師
2004
私の家 第5回日本建築家協会 25年賞受賞

著書

1986
現代建築 空間と方法2/同朋舎
2005
中心のある家 (くうねるところにすむところ―子どもたちに伝えたい家の本)/インデックス・コミュニケーションズ
2014
暮らしを楽しむキッチンのつくり方 安立 悦子 共著/彰国社
2022
中心のある家 建築家・阿部勤自邸の50年/学芸出版社

住まいにとって大切なこと

住まいは雨風を防ぎ、災害等に対して安全でなくてはいけません。便利さ、使い勝手も大切です。建設コストがリーズナブルで、ランニングコストを押さえるようにしなければなりませんし、見落としがちなメンテナンスコストについても忘れてはなりません。マンション経営等では予想以上にかかり、収支のバランスに影響します。

低いメンテナンスコストで長持ちしなくてはなりません。

何といっても大切にしたいのは心との関わりです。

安らぎの得られる場、拠りどころ、調律の場、楽しみや知的刺激の得られる場といった心との関わりです。特に子育ての空間には脳細胞に対する幅広い知的刺激が大切です。細胞は刺激により育ちます。

馴染むという関係も大切です。時間の経過の中で、住い手に馴染み、環境に馴染むものでなくてはなりません。

馴染む為にはある程度のルーズさも大切です。建築家の個性でガチガチにデザインされていて家具を一つ置くのにも建築家に気を使う芸術作品には住まいとしてはなかなか馴染めません。

住まいは、あくまでも住い手のもので、住い手らしさ、住い手らしい品格が大切です。

年を経て劣化せず良くなる住まい

私の家(中心のある家)は竣工してから50年になりますが全く古さを感じさせません。むしろ年を経る毎に良くなっています。物理的に劣化していません。その主な原因は、庇と無垢の素材です。

外観のコンクリート打ち放しが劣化していないのは、庇が出ている為です。素性の知れない新建材でなく、人類が何万年の間慣れ親しんできた石、木、土、といった、中まで本物の無垢素材は、経年変化によって人や環境に馴染み、風合いが出て、年を経る毎に良くなります。

40年間、毎年平均2〜3回、まんべんなく取材されて、計100回近くになります。時代の変化に関係なく常に一定の評価を得ていることになります。むしろ高まっているようにも感じます。

時間のなかで私との関係もより深まり愛着も湧き、居心地が良くなっています。周辺環境とも馴染み街の風景ともなっています。

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“正しく古い物は永遠にあたらしい”
スウェーデンの画家カール・ラーションの家の天井に描かれた絵の中に書かれている。池原義部先生のスケッチ

二十五年賞

日本建築家協会に25年賞があります。賞の趣旨とし、下記の様に記されています。

25年以上に渡って「長く地域の環境に貢献し、風雪に耐え美しく維持され、社会に対して建築の意義を語りかけながら、過去の遺産に終わらずに、我々と同世代を生き続けて来た建築」を表彰し、併せて「その建築を美しく育て上げることに寄与した人々(建築家、施工者、建築主及び維持管理に携わった者)」を顕彰する事により、作品がこれからも生き続けて行く事への契機となる事への期待と、多様化する価値基準の中で、建築が果たす役割をあらためて確認するとともに、次世代につながる建築のあり方を提示することを目的とします。

私はこの25年賞を過去7回受賞しており、その事を大変誇りに思っております。竣工当時素晴らしい建物は沢山あります。25年以上、物理学的に存在している建物も沢山あります。しかし生き生きと大切に使い続けられ、デザイン的にも古さを感じない建物はそう沢山はありません。

密かに自慢、いや不思議に思っているのですが、小さなアトリエ事務所のアルテックより多く25年賞を取っているのは、1位が建築士が1000人近くいる日建設計の8回、3位が槇総合計画事務所の4回です。勿論住宅作品が入っている事とか、応募していない作品も沢山あるとは思いますが、それにしてもなんだか不思議だと思いませんか?

Superminihouse

早稲田大学建築科創設100年記念事業の一つとして行われた国際コンペです。15㎡(4.5坪)という狭小の住まいを作るという課題です。

“ちいさな住まい”というテーマは、イニシアルコストのみならず、メンテナンスコスト、ランニングコストも少なくなり、省エネに関して非常に有効です。追い求めているテーマでもあるので、参加しましたが結果は佳作でした。

入賞作品はいずれもユニークな提案でしたが、実際に作ってこれに住むとなると、コスト面、技術面、住み心地、等でどうかな、という感じでした。

私の案は、1等案は実際に建設と要綱の中にあったので、建築基準法上も合法で(外国の応募者は天井高が1.4m以下は面積に入らない等という事は知っているとは思えず同じ土俵には乗り難いと思われますが)、本当に建てる、という事を前提に考えました。

良い案ですから、なんとか実現したいと思っていますので、小さな家に興味をお持ちの方はご連絡ください。25㎡の案も用意しています。

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住まいや空間を作ろうと思っている方々へ

イメージする

住宅雑誌、住宅作品集等を買い、パラパラめくり気に入った写真にポストイットを貼っていきましょう。それを集めて行くと、どのような住まいや空間が好きなのかが見えてきて漠然としたイメージが湧いてきます。

建築家を選ぶ

イメージに近い空間を設計する、価値観の合う建築家を、本やホームページで探し出し、逢いに行き、話し合ってみましょう。これを繰り返し、建築家を選びます。これからの人生に深く関わりを持つ人ですから慎重に選びましょう。

ハウスメーカー、工務店等も設計をしますが、いずれも施主とは利害が相反するわけです。本当に施主サイドに立って設計するのは建築家です。

設計から着工まで

私の場合、気に入っている住まいや空間の写真、このようにしたいというメモ等のファイルを作ってもらい、それを繰ったり、話し合ったりする中で、あなたがどのような家に住まいたいのか、どのような空間が好きなのかを探し出します。

それを、プレゼンテーション、修正の繰り返しの中で、あなたのイメージに近づけていきます。漠然としたイメージが形に成って行くのですから、あなたにとっても楽しい作業です。住まいは住い手の人格の表現の場でもありますから、住まい手らしさが大切です。設計段階から深く関われば関わるほど愛着が湧きあなたの住まいになります。 案が固まったら、見積や工事をする為の実施設計図を作ります。施工会社を何社か選んで積算を依頼し、それを精査し業者を決定し、工事契約をしたら着工となります。