賀川豊彦記念松沢資料館

混構造都市住宅小さな家住まいの顔風景内と外の間壁・間口重なり心地よい場所エントランス・アプローチホールサニーホールサニタリーデン趣味の部屋キッチン野外生活空間パティオデッキ回廊吹き抜け階段トップライト暖炉

JIA25年賞(2008年度)

賀川豊彦に関する資料を発集、整理、保存して後世に伝え、広く一般に公開して社会に生かすと同時に、彼の思想や活動を受け継いで活躍している人々の拠点として計画された。

敷地は終焉の地である松沢で、そこには賀川豊彦が昭和6年に建てた教会と牧師館が残っていた。建築学的評価はわからないが、なかなか良い雰囲気で、この建物に関りをもった人々の思いが伝って来るようで、建物自体の良さもさることながら、それ以上にその目的とか、人々とどう関りを持つかという事が重要であることを実感させるものであった。新しい建物の為にこれらの建物を毀すことは、単に建物を失うだけではなく、この建物との関りに於て存在していた大切なものをも失うことになるのではないかということで、新しい建物の中にこれらを残すこととした。

賀川豊彦の著書の中に、よく自然淘汰の話が出て来る。自然界は、動物にしても植物にしても、実に合目的的に出来ている。これらは、何千年何万年という時の流れの中での変化と選択の繰返しのなかから生れてきたものである。この事は、建築創造の過程にもあてはまる話である。

「目的」「変化」「選択」は、この建物の空間構成上のテーマのひとつとなっている。宇宙目的の象徴ともいうべき東西に走る軸線によって秩序立てられた、変化のある空間が展開しており、人々はその中から自分にあった空間を選択し関りを持つ。この軸線には、もうひとつのテーマである「光」が関ってくる。それは中心部の光の庭であり、トップライトであり、賀川豊彦自らの手になるステンドグラスである。“光の庭”には垂直方向の軸もある。“光の庭”に入った光は、周辺の展示空間にほど良い明るさを提供し、中心部分のガラスブロックのスリットを透かして1階及び地階の収蔵庫へと達する。これは地中の養分をすいあげ光合成により生命活動を維持する植物のイメージにつながる。